Workspace Studioで自動化する
情報この手順でできるようになること
Google Workspaceに内蔵された自動化ツール「Workspace Studio」で、最初の1本を組むための手順です。 Business Starter・Standard・Plus、およびEnterprise版・Education版で使えます。
Google Chatで話しかけると処理が動く形の作り方と、Googleの外にある仕組み(自分で用意したサーバーなど)を呼び出す方法まで進めます。社員に配る場合の管理者側の設定は、Google WorkspaceのAI管理者設定にまとめています。
Workspace Studioとは
Google Workspaceに含まれている、コードを書かずに自動化を組めるツールです。以前は「Google Flows」という名前で呼ばれていました。n8nやGASと同じ用途のものですが、Workspaceの中で動くため、追加のアカウント契約もサーバー準備も要らないのが違いです。
組み方はとても単純で、「スターター」1つと「ステップ」複数の組み合わせだけです。
- スターター:処理が始まるきっかけ。フローに1つだけ設定します
- ステップ:始まったあとに実行する処理。いくつでも並べられます
選べるスターターは、決まった時刻・曜日(スケジュール)、Gmailの新着メール、Googleフォームの送信、Google Chatのメッセージ、スプレッドシートの変更などです。
ステップ側には、Geminiに聞く・Gemを使う・要約する・値を取り出す・真偽を判定するといったAIの処理に加えて、条件分岐やループ、Driveの操作、メール送信などが並んでいます。
最初の1本を組む
- Workspace Studioを開きます(Workspaceのアプリ一覧から入れます)
- 新しいフローを作り、スターターを1つ選びます(例:「Googleフォームに新しい回答が届いたとき」)
- ステップを順に足していきます(例:「Geminiに要約させる」→「スプレッドシートに追記する」→「Chatに通知する」)
- テスト実行して動作を確認し、有効にします
n8nのようにノードを線でつなぐのではなく、上から下へ処理を並べる形なので、最初の1本なら30分ほどで組めます。
Chatから呼び出す:どのフローが動くかの決め方
「Chatで話しかけると処理が動く」形にしたい場合、その設定はスターターにあります。Google Chatのスターターは4種類です。
- スペースに新しいメッセージが投稿されたとき
- 自分(フロー)が@メンションされたとき
- メッセージにリアクションが付いたとき
- ユーザーがスペースに参加したとき
さらに「特定の人からのメッセージだけ」「会話の種類ごと」といった絞り込みができます。
注意⚠️ 「話しかけたらAIが適切な処理を選ぶ」形にはなりません
ChatGPTやClaudeのように、依頼の内容をAIが読み取って適切な処理を選んでくれる仕組みは、Workspace Studioにはありません。1つのフローに、スターターは1つだけです。
そのため、実際には次のどちらかで組みます。
用途ごとにスペースを分ける(おすすめ)
#動画依頼 #議事録 #見積作成 のようにChatのスペースを分けて、1スペースに1フローを割り当てる方法です。社員から見ても「動画が欲しければ #動画依頼に書く」というだけなので迷いません。部署ごとに使えるものを変えたい場合も、スペースのメンバーを分ければそのまま実現できます。
1つのスペースで、Geminiに振り分けさせる フローの最初に「Geminiに聞く」ステップを置いて依頼内容を分類させ、そのあとの条件分岐で処理を変える方法です。柔軟ですが、分岐が増えるほど動作確認が大変になります。
社内で使ってもらうなら、賢さより「社員が迷わないこと」のほうが効きます。まずはスペースを分ける形から始めるのが確実です。
Googleの外へ出す:Webhookステップ
Workspace Studioには主要なサービス向けの接続部品が用意されていますが、それに無いサービス(自分で用意した仕組みなど)へは、「Webhookを送信する」ステップを使います。指定したURLへHTTPリクエストを送るだけの汎用的なステップで、これがあることで「Workspaceの中で受け付けて、処理は外でやる」という組み方ができます。
Apps Scriptで独自のステップを自作する方法も用意されているので、Webhookで足りない場合はそちらへ進めます。
実行環境をどこに置くか
Googleの外で重い処理をする場合、その置き場所が必要になります。常時起動のパソコンを用意しなければいけない、ということはありません。
- クラウドの従量課金サービス:処理が来たときだけ起動して、動いた分だけ課金される形です。使っていない時間の料金はかかりません。GoogleのCloud Run、AWSのLambdaなどが該当します
- 自分のパソコン・小さなサーバー:Mac miniのような常時起動の機械や、月数百円〜のレンタルサーバーでも動きます。私自身、n8nはMac miniを母艦にして動かしています
- 社内にサーバーが無い場合:クラウドの従量課金サービスを選べば、機械を買う必要はありません。Google Workspaceを使っているなら、同じGoogleアカウントでGoogle Cloudのプロジェクトを作れるので、契約先を増やさずに済みます
最初から本格的な構成にする必要はありません。まず手元の機械で動かして使い勝手を確かめ、業務に定着してからクラウドへ移す順番で問題ありません。
全体像:動画作成を例に
Remotionのように、パソコンの中でプログラムを動かす必要があるものは、Geminiの画面やGemの中では動きません。そこに実行環境が無いためです。こうした場合は、依頼を受ける場所と、処理をする場所を分けます。
社員 Chatの #動画依頼スペースで依頼を書く
↓ ← Workspace Studio のスターターが反応
Studio Webhookステップで、外の仕組みへ依頼を渡す
↓
処理側 動画を組み立ててレンダリングする(ここだけ自前)
↓
Studio 完成した動画をDriveへ保存し、Chatで依頼者に知らせる
社員から見えるのはChatの画面だけです。AIの画面に行く必要がありません。ここが、社内に広げるときに一番効いてきます。
「これはスキルにするの?」の答え
この構成には性格の違う3つの部品があり、そのうち「スキル」なのは1つだけです。
| 部品 | 中身 | スキルか |
|---|---|---|
| 受付と配線 | Workspace Studioのフロー | いいえ(フローという別のもの) |
| 動画を作る処理 | Remotionのプログラム | いいえ(ふつうのプログラム) |
| AIへの指示書 | スキル(SKILL.md) | はい。ただしAIが判断する部分だけ |
そして、よく見落とされる点があります。この形なら、AIが要らない場合もあります。
フォームで「タイトル・本文・色・素材の場所」を受け取って、決まったテンプレートに流し込むだけなら、AIの出番はありません。データを渡してレンダリングするだけです。
AIが必要なのは「ざっくりした依頼から、中身を組み立てる」部分です。「新商品の紹介動画を30秒で」という依頼から、場面の割り振り・入れる文言・尺の配分を考えさせる、ここだけ。スキルとして書き残すのも、この部分だけで足ります。
置き場所にも注意が必要です。スキル(SKILL.md)は、Workspace Studioの中では使えません。 Studio側のAI処理は「Geminiに聞く」という形で、スキルのファイルを読み込む仕組みではないからです。スキルが効くのはClaude CodeやGemini CLIのようなAIエージェント側、つまり上の図の「処理側」になります。
社内に広げる前に
自分ひとりで使う分には、ここまでの内容で足ります。社員に使ってもらう段階になったら、管理コンソール側の設定が別途必要です。フローの共有可否、部署ごとの出し分け、動いているフローの停止方法などをGoogle WorkspaceのAI管理者設定にまとめました。
なお、フローは実行した本人の権限で動きます。本人がDriveで開けないファイルは、フロー経由でも開けません。裏を返すと、共有ドライブの権限が整理されていないと、フローもその無秩序をそのまま引き継ぎます。社内展開の前に一度目を通しておくことをおすすめします。
⚠️ つまずきやすいポイント
- フローを共有すると「コピー」が渡る:リンクで共有すると、相手には作った人の設定ごとコピーが渡ります。入力していた文章、メールアドレス、Driveファイルへのリンクも一緒です。意図せず情報が渡ってしまう経路になるので、共有は必要なものだけに絞ってください
- スターターは1つしか設定できない:「フォームからでもChatからでも動かしたい」という場合は、フローを2本作ることになります
- Chatの画面からGemは使えなくなった:2026年8月26日の変更で、Chat内のGeminiサイドパネルが廃止され、ChatからGemを呼び出せなくなりました。Gemは他のWorkspaceアプリのサイドパネルでは引き続き使えます
- 業務の中心をGemに置かない:Studioには「Gemを使う」ステップがありますが、Gem自体に廃止の観測が出ています(2026年9月時点でGoogleの公式発表ではなく、確定情報ではありません)。フローの中では、Gemを呼ぶ形より「Geminiに聞く」ステップに指示文を直接書く形のほうが、後々の作り直しが少なくて済みます
- クラウドで動かす場合、対応状況を確認する:処理側をクラウドに置く場合、使うツールがそのクラウドに正式対応しているかを先に確認してください。たとえばRemotionのGoogle Cloud Run対応は、2026年9月時点でまだ試験版(alpha)です
- Googleの外との連携が多いならn8nも検討する:Workspace Studioの守備範囲はWorkspaceの中が中心です。多数の外部サービスをまたぐ自動化は、n8nのほうが見通しよく組める場面があります