スプレッドシート(Excel) 基本
情報この章の要点
関数名を覚える時代は終わりました。業務の言葉で頼めば、数式・集計・分析までAIが組んでくれます。ただし数字は意思決定に直結するので、このジャンルだけは「検算する」までが制作です。
「関数を覚える」から「業務の言葉で頼む」へ
スプレッドシートのAI活用で最初に変わるのは、XLOOKUPやピボットテーブルの使い方を覚える必要がなくなることです。「担当者ごとの今月の売上合計と前月比を出して」と業務の言葉で頼めば、数式も集計表もAIが組みます。
「Excelが苦手だから」とデータ活用を避けてきた人ほど、恩恵が大きいジャンルです。
先に決めること:やりたいのは3つのどれか
スプレッドシート系の依頼は、実務ではほぼ3つの型に分かれます。
- 数式・集計を組んでほしい(表は既にある。粗利率の列を足したい、月別集計を作りたい)
- 分析してほしい(一度きりの深掘り。異常値を探す、傾向を読む、グラフ化する)
- 繰り返しを自動化したい(毎週・毎月、同じ集計と通知を回したい)
最初の2つはこの章の道具で完結します。3つ目だけは性質が違い、GAS(Google Apps Script)による自動化=アプリの領域に入ります。「同じ依頼を3回した」と気づいたときが、自動化を検討する合図です。
どのツールから始めるべきか
スプレッドシート系のAI活用は、「どこで完結させたいか」で選ぶツールが変わります。
| こういうときは | おすすめツール |
|---|---|
| 既存のExcel/Sheetsの中で完結させたい(Microsoft製品) | 1. Copilot in Excel/Claude for Excel |
| 既存のExcel/Sheetsの中で完結させたい(Google製品) | 3. Google Sheets + Gemini |
| 複雑な集計・統計処理を対話で任せたい(使い捨て分析) | 2. ChatGPT/Claude のデータ分析機能 |
| 繰り返す集計・通知を自動化したい(定型化された自動処理) | アプリ-2 のGAS段階へ |
「既存の表を今すぐ何とかしたい」ならCopilot in ExcelかGoogle Sheets + Geminiが最短です。「一度きりの複雑な分析」はChatGPT/Claudeへのアップロードが速く、「毎回同じ集計を繰り返す」ならGASでの自動化を検討する、という順番で考えるとツール選びに迷いません。各ツールの具体的な使い方は 事例集 へ。
つまずきの多くは、AIではなく「表の状態」が原因
AIに渡す前の表が汚れていると、どのツールでも結果が濁ります。よくあるのは次の3つです。
- 表記ゆれ:「(株)山田」「株式会社山田」「山田(株)」が別の会社として集計される
- 結合セル・見出しの多段化:人間には読みやすくても、AIには構造が読み取れない
- 1つのシートに複数の表:どの範囲が対象か、AIが取り違える
きれいに直してから渡す必要はありません。掃除そのものをAIに頼めばいいのです。「この列で表記が揺れている値を洗い出して」から始めると、集計の精度が一段変わります。
鉄則:検算するまでが制作
このジャンルだけは、他と比べて出口の確認を厳しくしてください。売上・粗利・件数といった数字は、そのまま経営判断や顧客への提示に使われるからです。
- 意思決定に使う数字は、別の切り口(フィルタ・別数式・電卓)で一度は検算する
- AIには元データを直接触らせず、複製したシートで作業させる
- 「どういう計算でこの数字になったか」の説明をセットで出させる
実践|最初の一歩
例コピペで試す:手元の表の健康診断
「添付の表を分析する前に、まずデータの状態を点検してください。①表記が揺れている値、②空欄・欠損が多い列、③集計の妨げになる構造(結合セル等)を洗い出し、修正案を提示してください。修正はまだ実行しないでください。」
点検→掃除→集計→検算。この順番さえ守れば、スプレッドシートはAIでつくるジャンルの中で最も費用対効果の高い時間短縮になります。
実例|私の場合:クライアントの3年計画と返済シミュレーション
製造業のクライアント支援で、3年の数値計画と、借入を借り換えた場合の返済シミュレーションをExcelで作りました。ここでの分担がまさに本章の型です。
- 前提は人間が決める:売上の見込み・原価の置き方・借換えの条件は、社長との面談で詰めた数字を使う。ここはAIに推測させない
- 表の構造と数式はAIに組ませる:「月次で3年分、この前提で返済額と残高の推移が見える表を」と業務の言葉で頼み、レイアウトや数式の組み立てを任せる
- 検算してから渡す:返済総額と最終残高を別の切り口(電卓・別数式)で照合してから、クライアントに見せる
金融機関にも見せる数字なので、「検算するまでが制作」はこの案件では文字どおり死活問題でした。逆に言えば、検算の型さえ守れば、こうした計画表づくりは半日仕事から1〜2時間の仕事に変わります。
全体の心構え
- AIが出した集計結果・数式は必ず自分で検算する
- AIは指示を誤解したまま、それらしい数字を返してくることがあります。特に金額や件数など、意思決定に使う数字は、別の切り口(フィルタ・別の数式・電卓)で一度は検算してから使いましょう。「AIが作ったから正しい」という前提には立たないことが最大の防御線です。
- 元データは残したまま、AIには「複製」で作業させる
- AIにシートを直接編集させる場合、元データの列や行を上書きされると後から検証しづらくなります。作業前にシートを複製しておく、あるいは編集後の差分を確認できる状態にしておきましょう。
- 「毎回同じ依頼をしている」と気づいたら自動化を検討する
- 対話型のAIに同じような集計を毎週頼んでいるなら、その時点でGASでの自動化を検討する合図です。作業のたびにAIへの指示文を考える手間自体もコストであることを忘れないようにしましょう。
具体的なツール別の作り方は 事例集 へ。