言語化する
自動化したい気持ちはある。でも、いざAIに任せようとすると手が止まる。その壁のほとんどは、言語化にあります。
言語化できないものは、AIに渡せない
AIは、渡されたものでしか動けません。「なんとなくいつもやっている」仕事は、AIには見えていません。頭の中だけにある手順・判断基準・例外処理は、AIに渡す前に言葉にする必要があります。
これは難しいことではありません。「言語化する」とは、自分の仕事をAIが読める状態にすることです。完璧な仕様書を書く必要はなく、AIと対話しながら育てられる最初の1行があれば十分です。
この記事が対象にするのは、日々の作業をどう手順に落とすかという話です。「毎週やっている」「毎回同じ手順を踏んでいる」。そういった繰り返し業務を、AIが読める言葉に変換することを扱います。
そもそも「どの作業をAIに任せられるのか」が浮かばない場合は、先に(参考) AI活用の参考資料で候補を出してから戻ってきてください。あちらは候補を見つける章、こちらは見つけた作業を渡せる形にする章です。
言語化の6つの問い
業務を言葉にするとき、次の6点を書き出すと形になります。
いつ・どのくらいの頻度でするか
決まった時間に発生するか、何かが起きたときに発生するか(例:「毎週金曜17時に」「問い合わせフォームに回答が来るたびに」)
何をするか
この作業のゴールは何か(例:「面談後に送る御礼メールの下書きを作る」)
何を使うか
どんな情報を入力として渡すか(例:「面談メモ・相手の名前・話した内容の要点」)
どの順でするか
手順を番号で並べると何段階か(例:「①要点を整理→②冒頭の挨拶文を作る→③次のアクションを1行足す」)
どこで迷うか
判断が入る場面・例外はどこか(例:「相手が既存クライアントのときは、文体を変える」)
どこに出すか・誰に渡すか
できた結果を、今どこに置いている・誰に渡しているか(例:「メールで担当者に送る」「Slackの#報告チャンネルに投稿する」「上司に口頭で伝える」)
6つ全部が揃わなくても始められます。「何をするか」と「何を使うか」が言葉になっているだけで、AIは動き始めます。残りは使いながら足していけば十分です。
「暗黙知」を掘り出す方法
「うまく言葉にできない」と感じるのは、仕事が身についている証拠です。逆に言えば、暗黙知が多い作業ほど自動化の価値が高く、言語化さえできれば手放せる仕事です。
掘り出すコツは、AIに実況させることです。
「私がこの作業をやっているところを、隣で見ているつもりで手順を言語化してください」
と頼んで、AIが書き出した手順に「ここは違う」「ここにもう1ステップある」と赤を入れていくと、自分でゼロから書くより速く形になります。
例実際の流れ
- AIに「私の仕事をヒアリングして手順に直してください」と頼む
- AIが「まず何をしますか?」と聞いてくる
- 口頭で答えるように話しかける
- AIが仮の手順書を出してくる
- 「この順番は違う」「この判断は私がやる」と直していく
- 5往復もすれば、使えるレベルの言語化ができあがる
言語化は「業務改善」の副産物でもある
言語化を進めると、予期せず気づくことがあります。
「この確認ステップ、毎回やっているけど意味があるのか?」「なぜこの順番でやっているのか、実は理由がない」。言語化の過程で、不要な手順が浮かび上がります。
AIに渡すための言語化が、そのまま業務のムダ取りになる。これが言語化を「最初のステップ」に置く、もう一つの理由です。
言語化した先へ
言語化できた仕事は、次のステップへ進む準備ができています。
「毎週やる」「毎回同じ手順」なら → 仕組みにする価値があるか(効率化・自動化の考え方) 「どこまでAIに任せるか」が不安なら → 安全に任せる範囲(安全に任せる範囲の決め方)
言語化は終わりではなく、始まりです。一度言葉にしたものは、使うたびに育てていけます。