トップAIでつくる基本

AIでつくる本文

ドキュメント 基本

情報この章の要点

ドキュメント制作は「新しい道具を作る」より、既存の文書ソフトにAIを組み込んで使いこなす場面が多いのが特徴です。


文書仕事は、AI活用の本丸

報告書・議事録・提案書・マニュアル。中小企業の実務で毎日発生し、しかも時間を食っているのは、たいていこの文書作成です。

そして文書は、このカタログの中でAIが最も安定して力を発揮するジャンルでもあります。画像や動画と違って、素材(過去の資料・録音・メモ)がすでに手元にあり、成果物の良し悪しを自分で判定できるからです。「AIでつくる」をどこから始めるか迷っているなら、まずここから始めることをおすすめします。

先に決めること:起点はどれか

文書仕事のAI活用は、起点が3つに分かれます。自分の仕事がどれかを決めると、使う道具が自然に決まります。

  • ゼロから書く(提案書・案内文など)→ 材料を渡してたたき台を作らせる
  • すでにある文章を整える(推敲・トーン統一・要約)→ 文書ソフト内蔵のAIで完結する
  • 音声や資料の山から起こす(議事録・面談報告書・マニュアル)→ 文字起こしや資料読込を挟んでから整形する

共通する原則は1つだけです。AIには「要約」ではなく「構造化」を頼むこと。発言や原文をできるだけ残したまま見出しを立てさせると、事実確認がしやすく、AIが勝手に足した内容にも気づけます。

どのツールから始めるべきか

ドキュメント制作でAIを使う場合、まず「どこで完結させたいか」を決めるのが近道です。以下の表を参考に選んでみましょう。

こういうときは おすすめツール
既存の文書ソフト内で完結させたい(手軽・追加契約不要) 1. Word/Docs内蔵AI(Copilot・Gemini・Claude for Word)
過去資料を踏まえた報告書・提案書を作りたい(コンテキストを溜めて使う) 2. Claude Projects/ChatGPT Projects
複数資料を横断して質問したい 3. Gemini Notebook(旧NotebookLM)
面談録音から報告書を作りたい(音声起点で仕上げる) 4. 音声文字起こし+AI整形

最初の一歩なら1(いま使っているWord/Docsの中でAIを呼ぶ)が、環境構築も追加契約の判断も要らず手堅い選択です。同じ相手に同じ型の文書を繰り返し出すようになったら、2のProjectsに過去資料を溜める使い方に進むと、毎回の説明が要らなくなります。各ツールの具体的な使い方は 事例集 へ。

品質を分ける3つの渡し方

どのツールでも、次の3点を先に渡すかどうかで仕上がりが変わります。

  1. 読み手と用途:「クライアント向けの正式報告書」と「社内共有のメモ」では、求める文体がまるで違います
  2. 型(フォーマット):過去の同種文書を1つ添えて「この型に合わせて」と頼むと、構成の指示を言葉で説明する必要がなくなります
  3. 固有名詞リスト:会社名・人名・製品名を先に渡しておくと、議事録系の誤変換がぐっと減ります

逆に、渡していない数字や事実をAIが「それらしく」埋めてくることがあります。文書は関係者の目に触れる成果物なので、数字・固有名詞・誰が何を言ったかの3点は、必ず原資料と照らして人が確認してください(この確認の考え方は AIセキュリティの基本 の「出口」と同じです)。

実践|最初の一歩

コピペで試す:議事録の構造化

「以下は打ち合わせのメモ(または文字起こし)です。内容を要約せず、①決定事項、②宿題事項(担当者・期限つき)、③次回までの確認事項、の3つの見出しで整理してください。書かれていないことは付け足さず、判断に迷う内容は『要確認』と明記してください。 ―――(以下にメモを貼り付け)」

この「付け足さない・迷ったら要確認」という縛りが、文書系プロンプトの基本形です。慣れてきたら、自分の報告書の型をカスタム指示に登録して、毎回の指定を省いていきましょう(カスタムAI総論)。

音声文字起こし+AI整形という型

面談録音から報告書を作る、「音声起点」の型です。クライアント面談やヒアリングの録音を文字起こしし、そのテキストをAIで議事録・報告書の形に整えます。

代表的な使い道は、面談録音からの報告書ドラフト作成のほか、雑談混じりの会話から論点・決定事項・宿題事項だけを抽出する使い方、話し言葉特有の「えー」「あの」を除去して読みやすい文章にする使い方です。

文字起こしの精度は録音環境と専門用語の多さに左右されます。整形を依頼する前に、固有名詞(会社名・人名・製品名)のリストを先に渡しておくと誤変換の混入を防げます。整形は「要約」ではなく「構造化」を依頼するのがコツで、発言をできるだけそのまま活かしつつ見出しを立てさせると事実確認がしやすくなります。

AIへのプロンプト例

「以下は面談の文字起こしです。固有名詞は『〇〇社』『△△部長』のように統一してください。内容を要約するのではなく、①現状の課題、②合意事項、③次回までのアクション、の見出しで発言内容を整理してください。文字起こしにない内容は絶対に付け足さないでください。」

つまずきやすいのは次の3点です。

  • 録音の同意取得:クライアントとの面談を録音する場合、事前に録音の目的と用途(報告書作成のため等)を伝え、同意を取っておくことが前提になります。
  • AIが「言っていないこと」を足すリスク:整形の過程でAIが文脈から推測して発言を補ってしまうことがあります。特に数字・金額・固有名詞は、文字起こしの原文と照らし合わせて必ず人が確認します。
  • 話者分離の精度:複数人が参加する面談では、誰の発言かの判定(話者分離)が崩れることがあります。重要な発言ほど、誰の発言かを原音声で裏取りしましょう。

実例|面談報告書は「録音文字起こし→型に流し込み→自分で仕上げ」

私はクライアント面談のたびに報告書を作りますが、ゼロから書くことはもうありません。流れはこうです。

  1. 面談の録音を文字起こしする——Macの標準アプリ「ボイスメモ」で録音し、自動で文字起こしする。文字起こし精度は必要十分なレベルです。
  2. 前提情報をNotionから取得する——クライアントの基本情報、過去の面談履歴や進行中の案件状況を、顧客管理に使っているNotionから取得してAIに渡す。文字起こしだけでは「今回何を話したか」しか分からず、これまでの経緯を踏まえた報告書にするためのひと手間です。
  3. 報告書の「型」に流し込む——所定の見出し構成(面談概要/協議事項/決定事項/次回までの宿題)と文体指定をAIに渡して報告書案を作成させる
  4. 自分で仕上げる——内容を確認しながら細かな点を修正し、自分の言葉で仕上げる。確認して自分で仕上げるのは、AIの品質の問題だけでなく、仕事の責任が価値の核だからです。下書きまでの時間が浮いた分を、見立てを練る時間に回しています。

過去の経緯(コンテキスト)を毎回渡す一手間が、報告書の質を大きく左右します。詳しくはコンテキスト総論へ。

全体の心構え

  1. AIの下書きを鵜呑みにせず、必ず人が事実確認する
    • 数字・固有名詞・「誰が何を言ったか」は、AIが自信満々に書いていても間違っていることがあります。特に報告書・議事録は関係者の目に触れる文書なので、原資料(録音・元テキスト)と照らし合わせる一手間を省かないことです。
  2. 読み込ませる資料は目的に絞る
    • Gemini NotebookやProjectsは「関係ない資料まで詰め込む」と回答の精度が落ちます。案件ごと・目的ごとにソースを整理しておくと、AIの回答の質も、後から自分が資料を探す速度も上がります。
  3. 機密情報の扱いをツール導入前に確認する
    • クライアントの情報を外部AIサービスに読み込ませる場合、契約上・利用規約上の制約(学習利用の可否、データの保存期間など)を事前に確認しておきましょう。

具体的なツール別の作り方は 事例集 へ。