コラム:AI活用の成果は、足し算ではなく掛け算

AI活用の心構えで、AI活用の成果は「AI基本性能×指示力×コンテキスト×索引力」の掛け算で決まると考えています。ここでは、なぜ足し算ではなく掛け算なのか、4つの要素それぞれの実例、そして多くの人が引っかかる誤解を、もう一段掘り下げます。
4つの要素を、実務で見る
AI基本性能——伸びしろは、思うより小さい
最新モデルへの乗り換えは、4つの要素のうち一番手を出しやすい部分です。ですが、AIはコンテキストが9割で書いた通り、コンテキストさえ整っていれば、1世代前のモデルでも十分な回答が返ってきます。掛け算の中での重みは、AIの性能が一番小さい要素です。
指示力——情報があっても、指示が曖昧だと薄まる
2023年頃、プロンプトエンジニアリングが流行りました。AI基本性能に推論がされるようになり、多少雑な指示でもAIが先回りして回答してくれるようになり、プロンプトの必要性は若干下がっていると思います。とはいえ、「いい感じにまとめておいて」とだけ伝えて、期待とまったく違う資料が返ってきた経験が何度もあります。良い情報を渡していても、指示が曖昧だと期待する成果にたどり着かない可能性があります。つまり、プロンプトは不要ではなく、ある程度の指示は必要です。プロンプトのコツを確認してください。
コンテキスト——会社ごとの前提を渡せているか
「集客のアイデアを出して」とだけ頼むと、「SNSで発信しましょう」「チラシを配りましょう」と、どこかで聞いたような一般論が並びます。自社のサービス、顧客、これまで試してうまくいかなかった施策——こうした前提を渡してはじめて、答えは自社向けの具体案に変わります。基本性能の問題ではなく、渡す情報の問題です。仕組みの解説は渡す情報で、AIの答えは変わるに譲ります。
索引力——情報が増えるほど、必要になる
4つの中でいちばん重いのはコンテキストだと考えていますが、そのコンテキストが増えるほど必要になるのが索引力です。このAI活用マップも、コラムも章立ても増えるにつれて、AIに全部を毎回読ませるのは非現実的になりました。実際に使っているAIエージェントの仕組みでも、置き場所や担当スキルが増えるたびに「こういう依頼が来たらここを見る」という振り分け表(地図にまとめる)を育ててきました。索引力がなければ、せっかく積み上げたコンテキストも、AIが探し出せず存在しないのと同じになります。
「賢いAIを選べば解決する」という誤解
AIの精度に不満があると、多くの人がまず考えるのは「もっと賢いモデルに乗り換える」ことです。基本性能を上げれば解決するように見えますが、これは4つのうち1つの要素にすぎません。指示力・コンテキスト・索引力がゼロに近いままなら、どれだけ高性能なモデルに変えても、成果はゼロに近いままです。
実感としても、基本性能の差より、渡す情報の差のほうがはるかに大きく出ます。AIの精度に不満を感じたときにまず見直すべきは、モデルの乗り換えではなく、残り3つの要素のどこがゼロに近いかです。
AI活用の成果 = AI基本性能 × 指示力 × コンテキスト × 索引力 4つは足し算ではなく掛け算の関係にあります。どれか1つでもゼロに近づけば、他がどれだけ優れていても、成果全体がゼロに近づきます。
この式を思い出すだけで、「AIがうまく使えない」ときにどこを直せばいいかの当たりがつきます。次に不満を感じたときは、モデルより先に、4つのうちどれが欠けているかを確かめてみてください。
式の全体像はAI活用の心構え、指示力はプロンプトのコツ、コンテキストは渡す情報で、AIの答えは変わる・AIはコンテキストが9割、索引力は地図にまとめるへ。