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コラム:スキルを渡しても、動かないエージェントがいる

現場の手順(スキル)をどれだけ精密にAIへ渡しても、エージェントが期待通りに動かないことがあります。欠けているのは技術ではなく、経営者の判断基準や企業風土——数字にも手順にもならない「うちの会社なら、こう判断する」という土台です。効率化と土台づくりは別の作業で、両方そろって初めてエージェントは組織の中で機能します。

効率化を先に急ぐと起きること

AI導入の相談で最初に出てくるのは、たいてい「この作業を自動化したい」という話です。手順を整理し、スキルとして渡せば、確かに作業は速くなります。

ところが、しばらく運用していると違和感が出てきます。処理は速いのに、判断が「うちらしくない」。例外が起きたときの対応が、経営者の感覚とずれる。技術的には正しいのに、現場に馴染まない。

原因は、渡したのが手順(How)だけだったからです。拠り所(Why)——なぜその手順で、なぜその例外を許容するのか——が渡っていません。

手順は現場から、拠り所は経営者からしか引き出せない

手順は、現場に聞けば言葉になります。担当者は毎日その仕事をしているので、順番も判断のポイントも説明できます。

でも「なぜその順番で判断するのか」「例外が起きたとき、うちの会社は何を優先するのか」は、現場の担当者では答えられません。それは経営者の頭の中にしかない、企業風土であり経営者自身の判断基準だからです。

効率化という行動だけを先に磨いても、その手前にある関係性・判断軸が抜けていると、結果は長続きしません。

メモリとルールに、両方を分けて渡す

実務に落とすと、渡し先は2つに分かれます。

何を渡すか 中身 渡し先
手順(How) 業務の順番・判断のポイント スキル・ルール
拠り所(Why) 経営者の判断基準・企業風土 メモリ・ルール

ルールを決めるで触れた「ルール=AIの行動規約」「メモリ=人間についての記憶」という切り分けは、個人が使う場合の話でした。企業でこれを行うときは、「拠り所」の担い手が経営者しかいない、という一点が変わります。現場に聞いても出てこないので、代わりに引き出す誰か(推進役や外部の伴走者)が必要になります。

私の場合

自分のAIエージェント組織(会社のコンテキストをためる)でも、業務を自動化するスキルと、判断基準を書いたファイルは、はっきり分けて用意しています。「私はこう考えるか」「これは絶対にしないか」という判断基準は別ファイルに残し、エージェントに毎回読ませる形にしています。効率化のスキルと、判断基準のファイル。この2つは、同じ場所に書いても、別の作業として意識しないと、どちらかが後回しになります。


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